レッスン1「話をつくるために必要な材料を集める」

何を作るにも材料が必要です。

しかも必要な材料がそろっていなければ、作りたいものを完成させることが難しくなります。

たとえば料理。

レシピを見て料理をしていたら必要な材料が冷蔵庫になかった、なんて経験はありませんか?

上級者なら、経験と知識でうまく工夫して乗り切るところですが、料理初心者の場合はパニックになることも。

同じように、話を作る場合も必要な材料を集める必要があります。

しかも「材料の質」は完成品の品質に大きな影響を及ぼします。

とても重要なことなのです。

そこで今回は、話の材料を集める場合のポイントについて解説しようと思います。

材料が手に入る場所を探す

料理の材料はどこで手に入れますか?

たいていの場合は近所のスーパーマーケットで買ってきます。そのほかにも、八百屋、精肉店、鮮魚店などの専門店に行くこともあるでしょう。ネット通販という手もあります。知り合いの農家の方に分けてもらうと、新鮮でおいしい野菜が食べられます。

一方で、きっと本屋に行く人はいないでしょう。

DIY関係のものを売っているホームセンターも、違いますよね。自動車のディーラーにも、レンタルビデオ店にも、パチンコ店にも行きません。

あたり前のことですが、必要なものを手に入れるには、必要なものが手に入る場所に出かけます。

それ以外の場所に行くのは時間の無駄です。

話の材料を集める場合にも、その材料が存在する場所を探す必要があります。やみくもに探しても必要な情報は見つかりません。

ご存じのとおり、最近はインターネット上でたいていのことは調べられます。キーワードや適当な文章で検索をすれば、かなりの精度で必要な情報を探し出してもくれます。

それでも、あなたが必要とする情報について、たくさんの情報量をわかりやすく説明しているホームページがあれば、最初からそこを探したほうが効率的です。

また、図書館や新聞も情報の宝庫です。特定の団体や機関が発行している定期刊行物(雑誌など)も貴重な情報源です。

これらの情報源を整理しておくと、話を作る時の材料集めの効率は上がります。

信頼のおける情報源からの情報だけを利用する

情報を集める場所を選ぶときには、そこが発信している情報は信頼できるものかどうか確認しましょう。

簡単に言うと、うそ、確認されていない情報、自分にとって都合の良い情報などを、事実であるかのように伝えている情報源があります。インターネット上の情報については、信頼できない情報がかなり広まっていることもあり、危険です。

うそを伝えるくらいなら、黙っておいた方がずっと良いのです。

うその情報は、最悪の場合人の命を奪うこともあるからです。

そんなに深刻なことでなくても、うそを広めることはやめたほうがよいでしょう。何より、あなたが信頼されなくなります。

あなたは、どこかから入手した情報を「横流し」しただけかもしれません。しかし、あなたの話を聞いた人は、あなたへの信頼を失います。

「うそを言った人」「うそを見抜けなかった人」「うそかどうか確かめずに話した人」

と評価されるからです。

そう考えると、信頼できる情報源から情報を得ることはとても大切だと分かります。

しかし、どんな情報源からの情報であれば、「信頼できる」と言えるでしょうか?

例えばこれらの情報源は、比較的信頼度が高いと言えます。

国や公の機関の統計
専門誌に掲載された記事や論文
新聞記事

これらの情報を比べてみて、すべての情報源が全体として同じことを伝えているなら、それはかなり信頼のおける情報です。

言うまでもないことですが完全な情報源、つまり間違えることなど決してない情報源など、この世の中にはありません。情報を提供するのは人間ですし、人間は間違えることがあるからです。

その間違いを少なくするための方法が、「信頼性が高い情報源が発信している情報を、2つ以上調べて突き合わせる」という作業です。

手間はかかりますが、できる限り行った方がよいでしょう。

情報の鮮度に注意する

料理を作る時、食材の鮮度に気を付けると思います。古い食材は味も落ちますし、何より危険です。腐っていたら、食べた人が食中毒になるかもしれません。

話の材料である情報にも同じことが言えます。

情報には鮮度があります。

昨日まで事実だったことが、今日は事実ではないということもあり得ます。昨日までは存在しなかった、新しい技術やサービスが生まれているかもしれません。法律も変わります。

ですから、話の基礎となる情報については、いつも「最新版」を確認するのは大切なことです。

準備の時間がないので、配布資料は昨年作ったものを使いまわすという場合はどうでしょうか。取り上げる内容に大きな変更がないなら、それで問題になることはないでしょう。その場合でも「この資料には最新のデータではなく、昨年のデータが載っています。今年はこういう状況で、昨年とあまり違いはありません」と補足すると、より親切です。

テレビの情報はかなりの確率であてにならない

鮮度のいい情報と言うと、テレビ番組の情報を思い浮かべる方もいらっしゃいます。

毎日、日替わりで、様々な情報を発信していますから、そう思うのでしょう。

「テレビ局は新聞社とつながっているわけだし、一流の会社だろうから変な情報は流さないだろう」と、心のどこかで安心している節もあります。

しかし、結論を言えば、テレビ番組では結構いい加減な情報を発信しています。あまりうのみにしない方がいいと思います。

ダイエット系や健康関係の内容では、特にその傾向がひどい気がします。

それもそのはずで、テレビが「あてにならない情報」を流してしまう、構造的な問題があります。

例えば、テレビでは「わかりやすさ」が求められがちです。そのために断定してはいけないことを断定してしまうことがあります。

「これをすればやせる」

「〇〇は××に効く」

こういう表現です。

本来、科学的に正しい言い方をしようとすると、こんな感じになります。

「〇〇が××に効くかどうかについては、まだ十分検証されていません。人に対する大規模な実験はまだ行われていないので、効くとも効かないとも言えません」

科学的に正しい言い方だとチャンネルを変えられてしまいますね。

また、実際にはたいしたことではなくても、広告費を出してくれるスポンサーとの兼ね合いで、いかにも「スゴイこと」として取り上げなければならないこともあります。これらはテレビが持っている宿命です。公共放送を除くテレビ局は民間企業なので、スポンサーからお金を出してもらうために情報を発信しているからです。

それはどうしようもないので、テレビを見る時には話半分で。

事件や事故の報道(事件が、いつ、どこで、どのように発生したかなど)以外は、そのまま使える情報はないと割り切ってください。

テレビの情報をそのまま使っていると、思わぬ形で痛い目に遭うことがあります。

まとめ―よい素材はよい話づくりの第一歩

おいしい料理は良い素材集めから。

人前で話す場合にも同じことが言えます。

正確で鮮度の良い情報を集めるところでつまづくと、話そのものが成り立たなくなってしまいます。

そこで、次の点にこれからもご注意を。

正確な情報を発信している情報源を探す。
可能であれば2つ以上の情報源を突き合わせて確認する。
話の準備をする時は必ず最新の情報をチェックする
テレビの情報うのみにしない。

正確で信頼できる情報を伝えると、みなさんは「信頼のおける人」という評価を得るはずです。

人間関係でも仕事関係でも、信頼されることはとても重要なこと。

ぜひ、良い情報を集め、良い情報を発信する人を目指してください。

練習方法

あなたが人前で話す可能性のある分野で、信頼できる情報を発信している機関・団体を書き出してみましょう。なにも参照しないで、いくつくらい挙げられますか?

あなたが参考にしている資料(書籍、雑誌、ネット記事)で、参考文献や資料の出典が書いてあったら、その資料(すべて)を実際に読んでみましょう。

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