ある日、職場の上司から、「次の説明会は頼むよ」と言われたとします。
「参加人数は30人か40人くらいかな。この件に詳しくない人も大勢いるから、分かりやすく説明してね」と付け加えられたとしましょう。
「わかりました」と冷静に答え、平然としていられる人もいるでしょう。
「まいったなあ。人前で話すの苦手なんだけど」と、説明会のことがすごくストレスになる方もいらっしゃると思います。
そして「まいったなあ」の方にとって気の毒なのは、大半の方が「人前でわかりやすく話す」ために何をすればいいか、誰からも教えてもらえません。
「仕事は教えてもらうのではなく、盗め」というのは、昭和の職場でよく見られた光景です。
それにしたって、大して上手な話し手は会社や組織の中にいなかったりします。
一部の例外を無視してざっくり言えば、日本人の大半が「人前でわかりやすく話す」ために、何をしたらいいのか知らないのです。
このブログを書いているわたしのことを少しだけ話します
話はがらりと変わりますが、わたしは本業の傍ら、仕事に関係がある分野について講師としてお話ししています。
本業でもセミナー的なことをしているので、年間50回くらいは人前でお話ししています。
セミナー講師の仕事だけで食べているわけではないので、わたしの「話し手」としてのポジションは、ハイアマからセミプロあたりです。
周りの人の評判を聞くと、かなり上手に話しているそうです。
自分自身を客観的に評価するのは難しいのですが、聞き手の方にとって「わかりやすい話」を「眠くならないように話す」点では、まあまあ上手な方だと思います。
ぶっちゃけ、60分から90分の講演の機会をいただく機会が多いですが、ほとんど寝る人はいません。
そんなわけですから、結構な割合で「次回もお願いしたい」とリピーターになってくださることが多いです。(その積み重ねで、現在年間50件ほどのご依頼を受けています)
実は話すことが苦痛で仕方がなかった
現在のわたしの姿を見て、あるいは実際に会話して、ほぼ100%の方が「子どものころから話すのが上手だったでしょう?」とおっしゃいます。
逆です。
わたしは子どものころ、人前で物を言うことが苦手でした。
もっと言えば、今でも大勢の人の前で話すのが好きなわけではありません。好きではないが、上手にできるようになったのです。
これは家庭料理と似ている面があります。
わたしは料理もまあまあできるほうです。けっこうおいしく作れているそうです。
しかし料理自体は面倒です。料理が好きというわけではありません。
必要に迫られて、毎日作っているうちにまあまあ上手になった。少なくとも苦にならない程度までは慣れた、という感じです。
人前で話をすることも一緒だと思っています。
人前で話をするのが苦手で嫌いな人を、人前に出るのが好きな人に変える必要はないと思っています。
好きではないが、少なくとも弱点にはならない。
むしろ、あなたの話を聞いた人が、あなたの考えを理解し、共感してくれるようになること。そのためのテクニックを身に着けること。
それを目標にして、話し方を改善してはいかがでしょうか。
このブログを読んで得られることと得られないこと
これまでの長い「前書き」を読んでお分かりかもしれませんが、このブログ内の記事は「人前で話すのが得意ではない人」を対象にしたものです。
得意、つまり上手にできる人を目指すのであって、人前で話すことが「好き」になることは目指していません。
そういう話し方を身に着けたほうが、日常生活でも仕事の場面でも、何かと助かることが多いので身に着けるのです。
このブログの記事を読んで練習すると、おおよそ次のようなことを身に着けられるはずです。
- 聞いている人にとってわかりやすい説明方法。
- 聞いている人が心地よいと感じる話し方。
- 聞いている人に行動を起こさせるような、気持ちや考えの伝え方。
- 聞いている人が「耳障り」に感じる話し方のくせを取り除くための知識や練習方法。
逆に、このブログを読んでも得られないものは次のとおりです。
- アナウンサーのような高度な話の技術。
- バラエティー番組の出演者のようなトークの技術。
- 話すことが好きになったり、社交的になったりすること。
- 話し方を変えることで運を呼び込み、人生を変えること。
最後の点については、「幸せになれる話し方」「人生が変わる話し方」みたいなことをうたった、話し方の先生もいらっしゃるようです。
それはそれとして、このブログでは「話し方」は、誰でも改善できる1つの「テクニック」だと考えています。
たかだか人間が身につけられるテクニックの1つを学んだ程度で、人生変えられるかどうかなんてわかりません。
ですから、結果としてわかりやすい話し方を身に着けた方がハッピーになればいいなと思いますが、そこを目標に文章は書いていませんので、あらかじめご了承ください。
このブログの構成
構成と言うほどのことではないんですが、このブログに特徴があるとしたら「練習」という項目があることです。
1つ1つの記事では、話の作り方や上手な話し方のテクニックを、1つずつ説明しています。
その説明を読み終えると、その記事で取り上げたテクニックを自分のものにするために、どんな練習をすればよいか書いています。
記事を読んで、練習を繰り返せば、だんだんと上手に話せるようになるはずです。
この練習で目指していただきたいのは、「以前の自分よりも上手になること」です。
自分以外の上手な人と比べると落ち込みます。そして、どんなに努力しても追いつけない人が世の中にはいます。
例えば陸上競技の100m走。
みんなが同じだけ努力しても、特別早い人と、そこまで至らない人とがいます。
持っている才能や生まれつきの能力、そして家庭環境やこれまで受けてきた教育など、人それぞれに違いがあるからです。
しかし、走る練習を重ねれば、練習しなかった時よりもずっと速く走ることができます。
わたしたちが目指すのはそこです。
練習を重ねても、昨日と今日ではほとんど進歩は見られません。
しかし、1か月、半年、1年、練習を積み重ねると、じわじわと差が出てきます。
気が付くと、以前よりもずっと自分の気持ちや考えを人に伝えることが上手になり、以前ほど苦にならなくなっています。
上手にわかりやすく話すテクニックは万能の道具
こうして身に着けた、上手に、聞いている人にとって分かりやすく話すテクニックは、あらゆる場面で役立ちます。
日常の会話でも、仕事の場面でも、ボランティアや保護者会のような場面でも、必ず役立ちます。
上手に話すテクニックは、あなたの心と頭にある情報を、聞いている人が理解しやすいように伝える技術のことです。
あなたの心と頭の中にあることなら、それがプライベートなことであれ仕事のことであれ、何でも上手に伝えられるようになります。
すると「人生を変える」とまでは言いませんが、人間関係や仕事にプラスに働く可能性はあります。
伝えたはずの気持ちが伝わっていなくてケンカになる、ということは減るでしょう。
説明が悪くてお客さまが誤解したため深刻なクレームが発生した、ということも減らせます。
上手な話し方を駆使して相手をやっつけてしまわない限り、人間関係や仕事上のことにプラスに働くことが多いでしょう。
わたし自身、聞き手にとって分かりやすい話し方を練習して身に着けた結果、人間関係でも仕事でもプラスになっていると感じます。
人前で話すのが苦手だった子どもが、今では人前で話すことでお金までいただいているわけですから。
いきなり長くなりましたが、このブログがみなさんにとって役立つことを心から願っています。
また、お役に立てるよう、わたしが知っている範囲のことを、余すことなく書いてゆくつもりです。
人前で話すことは「ちっとも好きではない」けれど、「別に苦にならなくなった」し、「みんなは『上手ですね』って言ってくれます」と言える日が来ますように。

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